世界構想プログラム
N3 Program(Node of Narrative Network)
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Message 07
閉塞感を打破するために
進野 裕規 氏
花見川公園緑地事務所
主任技師
私が勤務している千葉市動物公園は、1985年に開園し、最盛期には年間100万人を上回る入園者が訪れました。しかし、2010年以降、入園者の減少や施設の老朽化といった課題を抱え、それまで外郭団体が運営したレストランと売店を民間事業者の運営に切り替えるとともに、遊園地を廃止して跡地を民間事業者に賃借することで経営の改善を図ってきました。しかし、2017年には再び入園者が減少し、これまでの努力が実を結ばない状況に職場には閉塞感が漂っていました。この状況を打破するために私は何をすべきなのかを見出したいと思い、世界構想プログラムの一つである文化サロン「ブランド・マーケティング」に参加しました。
世界構想プログラムでビジネス・パラダイムの転換を知り、今では職場に漂う閉塞感は第1カーブの陥し穴にはまっていることに起因するのではないかと思います。行政組織のすべてに言えることかもしれませんが、組織が目指すゴールや目標は現場とは関わりのない有識者や組織上層部が設定し、構想や計画という形で現場に指示を出す形が常態化しています。さらに、現場の職員は構想や計画に描かれた事業を実践するための駒としての役割を強いられています。
閉塞感を打破するためには、千葉市動物公園においても第3カーブのビジネス・パラダイムである「開かれた対話と創造の場」をつくることが必要だと感じています。
文化サロンは、まさに年齢、性別、生き方が異なる多様な人が集まり、組織の課題等を議論するようになっており、参加者は実際に開かれた対話の場を経験することができます。主催者である設樂さんは、対話の場が沈黙しないように参加者に発言を促すとともに、それぞれの意見に対して専門的な情報の提供をしてくださり、インターミディエイターが対話の場において果たすべき役割を参加者に示してくれます。
動物園は子どもが楽しむ場所というイメージがあり、千葉市動物公園でも主な入園者は未就学児を連れた親子です。しかし、千葉市動物公園の存在価値を高めるためには、より多くの人に動物園が楽しい場所だと認識してもらうことが必要だと考え、クラフトビールと音楽を動物園で楽しむイベントBrew at the Zooを初めて企画しました。
このイベントでは、動物園が大人も楽しめる場所であることを知ってもらいたい、地域に開かれた動物園にしたいというヴィジョンに共感してくれた、文化サロンで出会った人、普段から情報交換をしていた市内のNPOの人、千葉大学の学生とともに企画を練りました。会場装飾は学生がデザインを考え、地元の小学校と一緒に製作しました。また、イベントに協賛していただいた企業には学生がデザインしたTシャツを販売してもらいました。地元のアーティストには、ライブハウスを通して出演者を集めてもらい、地元の飲食店には、クラフトビールを販売できる業者を紹介してもらいました。
準備期間が2カ月しかなかったにもかかわらず、イベント当日は2日間で1万6千人以上の人にお越しいただき、クラフトビールは完売になりました。この経験を職場の内外に共有することで、動物公園を「開かれた対話と創造の場」にしたいと考えています。